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「シリアルアントレプレナーに負けないくらいの強い会社を作ろう!」が基本コンセプト

ベンチャーキャピタルから40%のシェアを要求された場合に考えてほしいこと

まだ右も左も分からないシード期に、ある投資家に出会いました。その投資家は自分やプロダクトのことを評価してくれて、出資をしたいと言ってくれています。  

条件を聞いてみたところ、「Post1億円で4000万円出資したい(シェア40%)」と提示されました。



・・・という場面に出くわした場合、あなたならどういう判断をしますか?

40%というのは結構大きな数字です。この時点で創業株主の持ち株比率は60%に希薄化します。

 

Post1億で4000万円調達した場合の資本政策(文字が小さくて見づらい場合は拡大してご覧ください)

 

心のどこかで「この取引は危険かも?」と思いつつも、「せっかく訪れたチャンスを見過ごすという判断をするようでは経営者としてダメだ」と自分に言い聞かせてはいないでしょうか。

「大きな希薄化によって自分自身のキャピタルゲインが減ることを考えるより、投資を受けることによる事業成長を優先させるべき」とも思っているかもしれません。

かつての私がそうだったように。

 

なぜ書くのか

 

なぜこのテーマで記事を書こうと思ったのかというと、私もかつて起業した会社の資本政策で大きな失敗を犯したからです。実際に当時の私は上記のようなことを考えて、自分の判断を正当化しようとしていました。

単に自分自身が資本政策に対して無知だったというのもありましたし、起業前の会社員時代を過ごしたベンチャーがイレギュラーな資本政策で成功していたということも、当時の自分自身の判断ミスを助長したように思います。そのような資本政策での成功事例はいわゆる生存者バイアスであり、再現性が乏しいということに気付かなかったのです。  

当時その資本政策がスタートアップ界隈で物議を醸したことももちろん知っています。そしてそういう失敗事例がスタートアップのエコシステムに共有され、数年前より資本政策に対する正しい理解が進んでいることも実感しています。スタートアップの成功確率はそうやって上がっていくのでしょう。

にも関わらず、今でも同じような失敗事例は少なからず存在しています。蛮勇で無謀な新米起業家が通る道です。その道に存在する避けられる地雷、避けるべき地雷を踏み続けています。

このような状況の中で、自分自身に当事者としての原体験があるからこそ書く意義もあると思うし、それによって伝わるメッセージもあるのではないかと考えています。

(念のため補足)
私たちがかつて産み出したSnapeeeというプロダクトは、壁打ちしてもらっていたVCと共に生み出したものです。彼らがいなかったらSnapeeeも私自身も世に出ていたかったわけですし、そこにはとても感謝しています。

最近は変なディールの話もその方面からは聞こえてこないですし、お互い学びが多かったんでしょうね。今でも当時の社外取締役含め、みなさんと仲良くさせていただいております。 

 

歪んだ資本政策が事業成長の機会まで奪ってしまう

 

話を戻します。

投資を受けることにより事業成長を加速させることができる、というのはほとんど正しいです。調達した資金を良いお金の使い方に回すことができれば、自己資金だけで会社を経営するよりも断然早く成長を加速させることができます。

問題はその成長をいつまで継続できるかどうかです。

シード期にあまりに歪んだ資本政策で資金調達をした場合、あなたが本当にやりたかったことや本当に実現したかった世界に到達するよりもはるか手前で、それに起因する多くの問題が発生して苦労することになります。

歪んだ資本政策の問題点としてよく言われるのは「大株主VCと創業者との間のコミュニケーションで苦労する」という話です。ところが、実際にはシードで入った大株主VCと創業者との間の関係性はむしろ比較的良好なことが多いです。

では具体的に、どのような問題が起きるのでしょうか? 

 

次回以降のラウンドの調達が難しくなってしまう

 

シードラウンドを乗り越えた先に、次の資金調達ラウンドが待ち構えています。

資本政策を失敗してしまったという認めたくない事実に、ほとんどの起業家はこのタイミングで薄々気づいています。私が相談を受けるのもこのタイミングが本当に多いです。

そうなった場合の次のラウンドのバリュエーション設定基準は「その時点での本来の企業価値」ではなく「さらなく希薄化を防ぐための単なる経営者(と大株主VC)の都合」になりやすいです。

希薄化が進んでVC比率が高まればIPO時の売り圧力も強まりますし、そもそもがそういう歪んだ資本政策を是としてしまうようなVCであれば、後先考えずに「とにかく高いバリュエーションでやろう」とハッパをかけてくることさえもあるでしょう。

それらのことをあれこれ考えた結果、Post5億くらいの価値が適正なところを、希薄化を恐れて8億や10億という値付けにしてしまいがちです。

 

Post5億と8億でそれぞれ1億円調達した場合の比較

 

1社か2社がその条件でOKを出したとして、その投資家は本当にあなたが望んだ相手なのでしょうか?

さらに言うと、その次のラウンドはどうすれば良いのでしょうか?事業がずっと右肩上がりで成長を続けていれば乗り切れるでしょうが、ほとんどのスタートアップには踊り場の時期があります。

仮に同じ株価でもう一度調達しなければならない、となった時に引き受け手はあるのでしょうか?ダウンラウンド?それこそ簡単に口に出せる話ではありません。

まともな資本政策であればまだまだチャレンジできていたはずだったのに、不本意なタイミングでの会社の売却や清算を余儀なくされるというケースさえもあり得ます。

 

マジョリティ(大株主)VCとマイノリティ(少数株主)VCの利害不一致

 

別のパターンとして、シードでPost1億円で4000万円を調達した後、2回目のラウンドでPost4億円で別のVCから4000万円調達するとします。

出来上がりの資本政策は以下のような感じです。最近は優先株を使うスキームも一般的にはなっていますが、便宜上どちらも同じ普通株だと仮定します。 

 

Post4億で4000万円調達した場合の資本政策

 

出資している金額はどちらのVCも4000万円です。現在のバリュエーションで見てもまだPost4億円なので不確実性は高く、VCとしてもかなりのリスクテイクをしているフェーズです。少なくともミドルステージやレイタースレージではありません。 

どちらのVCもかなりのリスクを負うフェーズにおいて、(提供してくれる価値自体に違いがあるとしても)この持ち株比率の差は適切なのでしょうか?後者のVCとしては、リスクを負うからこそ経営に関与すべき所は関与したいと考えるでしょうが、この比率でうまくバトンタッチできるのでしょうか?

シードのVCはこの後5億円でバイアウトできれば1億円以上のキャピタルゲインが発生しますが、新規のVCはそれだとほとんど利益は出ません。同じような時期に大差無いリスクを取っているにも関わらずです。

このような資本政策でも投資したいと言ってくれるVCが、果たして何社あるでしょうか? 

 

投資家があなたに言わないこと

 

上に挙げた事例だけでなく、歪んだ資本政策によって始まった構造上の矛盾は別の大きな矛盾を生み出し、その連鎖が経営の選択肢を狭めることに繋がります。株主間の関係の変化やコミュニケーションコストの増大はあくまでその一要素に過ぎません。

投資家は投資検討を行う際、起業家から提示された条件だけでなく、あなたが資本政策に対して無知であったり、そのリスクを過小評価していたりしているという事実も意外とシビアに見ていたりします。あなたにそれを積極的にフィードバックする理由が無いから言わないというだけです。 

 

VCから出資を受ける決断をする前に、少しだけ立ち止まって考えてみてください 

 

みなさんがご存知のように、各社ごとにマーケットサイズも経営環境も異なる中で、完全に理想的な資本政策というものは存在しません。

それでも押さえておくべきポイントはいくつか存在します。今回のテーマの重要なポイントは以下の2つです。

  • その資本政策で資金調達を行った場合、次回以降の選択肢はどれだけ残っているか
  • それぞれの株主が取ったリスクやバリューの大きさに対して、適切なリターン設計になっているか(=株主全員が幸せになるか)

 

選択肢が残っていれば勝負所で大型調達もできる

 

あともうひとつありました。

  • そもそもあなた自身やあなたの事業に本当に価値があるのなら、「シェア40%放出」よりも遥かにまともな条件で、別の誰かから資金調達ができるはず 


いずれも見落としがちなので気を付けたい所です。

VCは基本的には起業家の味方です。彼らとの関係がうまく噛み合ってそのバリューを活かすことができれば、事業成長の可能性は大きく広がります。一方で、VCにはVCのビジネスモデルがあり、起業家側とは別の行動原理を持っています。そのこと自体知っておいて損はありません。

重要なのは、起業家も資本政策をきちんと理解した上で自分たちの行動原理を持つことです。それ無しに投資を受けてしまうと、誰も望まない方向に、見えない力によって引きずりこまれることになります。

まだまだ書きたいことはあるのですが、長くなったので今回はこの辺で。さらに詳しく話を聞きたい場合は直接ご連絡ください。 

 

UVPを決めれば引き算の意思決定がしやすくなる

最近の仕事として、コンサル業と並行していくつかの事業会社の新規事業立ち上げにディレクターとして関わらせていただいています。開発側や企画側と連携しながら結構自由にやらせていただいておりまして、例えば以下のような所で頭や手を動かしています。

  • カスタマージャーニーの設計
  • ペーパープロト作り
  • サービス運営体制の構築
  • 初期のKPIの設定とモニタリング
  • マーケティング施策の検討と運用

 

上記の前にまず重点的に取り掛かることとして、Unique Value Proposition(=UVP、独自の価値提案) を決める作業があります。スタートアップ界隈の人にはおなじみのリーンキャンバスに出てくるアレです。

 

UVPが決まると、「最も重要な顧客が誰なのか」「捨てても良いものかどうかの判断基準」が明確になります。プロダクト開発やマーケティングにおいて重要だと言われる引き算の発想もしやすくなります。

一方で、「狙っている市場にいる多くの潜在顧客を獲得するために、あれもこれも盛り込みたい!」という人に対して、なぜそれを捨てた方が良いのかを理解してもらうのも結構大変です。

そのような時にUVPの説明と一緒によく例として出すのがライザップです。大抵の場合、ライザップを事例として出せばUVPの重要性を理解してもらえます。

 

ライザップに見るUnique Value Propositionの重要性

 

ライザップが事業として今後も成長し続けられるかどうかはさておき、この会社のUVPの定義の仕方はとても優れています。

ダイエットという大きな市場を狙おうとした場合、ダイエット願望がある人全員が見込客であると考えたくなりがちですが、少なくともこの事業において、彼らはそうはしませんでした。また、彼らが発明した『結果にコミットする』というUVPは独自の価値の提案というだけに留まらず、独自の価格設定も生み出しました。

ライザップのUVPの考え方はダイエットだけでなく、ゴルフや英会話にも応用されています。

 

「刺さる人にはものすごく刺さる」のが良いUVP

 

良いUVPを作ることは、誰に対して価値を届けたいのかというメッセージ性を強化し、戦略やオペレーションの洗練につながります。

UVPをきちんと定義することでプロダクトから余計な機能を落とすことができます。単にシンプルで使い易いというだけでなく、誰に対してどんな価値を提供したいのかという強い意志がプロダクトそのものから感じられる仕上がりになることでしょう。

マーケティングにおいても、本当にプロダクトの価値を届けたい相手に対してどうやったら届けることができるか、ということだけに集中できるようになります。

これらを体系立てて考えられるチームであれば、セールスやカスタマーサポート、さらには事業を支えるためのあらゆるロジックを丁寧に設計できるはずです。

顧客に愛され、競争力のある強いサービスを生み出すための第一歩として、まずUVPを定義する所から始めてみることをオススメします。

 

経営における怒りのコントロール

先日のこと。支援先企業の社長にオススメされて、別の支援先の経営陣と一緒に西麻布のお寺の座禅会に行ってきました。心穏やかな気持ちになって帰宅したのですが、郵便ポストに住民税の納付書が入っていて心の動揺を隠せませんでした。

気持ちを落ち着けるために、また座禅に行ってこようと思います。

それはさておき、今の仕事をしていると「エンジニアが作るプロダクトの質が低い」とか「人がすぐ辞めてしまってチームビルディングがうまくいかない」といった相談をされることがよくあります。

チームのディレクション能力の低さや誤ったインセンティブ設計など、うまく行かない原因はさまざまです。大抵の場合、原因はひとつではなくたくさんの要素が組み合わさっています。

原因をさらに掘り下げてみると、経営者自身が怒りやイライラをコントロールできていないことがものすごく大きな問題だったりします。

 

怒りっぽい経営者に共通する特徴

 

怒りやイライラをコントロールできない経営者には、以下のような共通する特徴があります。

  • 社内の仕組みではなくメンバーの考え方や性格などに原因を求めている
  • メンバーの考え方に原因を求めるので「危機感が足りない」など精神論的な言葉が多い
  • 自分の中に正解があり、それ以外のやり方を許容できない
  • メンバーに対して不信感があり、信頼していない
  • 自分より優秀だと思う人の話には素直に耳を傾ける
  • それ以外の人の話は聞かない 


これらのことが怒りとして表現され、結果としてチームやプロダクトに深刻な問題をもたらすのです。

経営者が怒りをコントロールできないことは企業価値の毀損に直結します。言い換えると、経営者が自分自身の怒りを適切にコントロールすることは、持続可能な形で会社を成長させるための一里塚になるということです。

実際の私の仕事でこういった状況の改善をサポートしたりもしていますが、その際、経営者自身の怒りのコントロールと社内の仕組み作りは必ずセットで取り組むことになります。持続可能な形で回る仕組みを作らないと、実感できる結果が伴いません。そうすると最終的には怒りやイライラがやっぱり表に出てきてしまうからです。

怒りがコントロールできると具体的にどう会社が変わるのか、最初のうちはあまり実感が湧かないものです。しかし辛抱強く取り組んでいくつかの小さな成功体験を積み重ねるうちに、怒りのコントロールによるメリットが大きいことに気付いてきます。

ここまで来れば良い循環に入り、経営者としてもチームとしても良くなる一方になってきます。

 

社員から向けられる怒りを経営陣みんなで吸収するという発想

 

組織には経営者から社員に向けられる怒りだけでなく、社員から経営者に対して怒りが向けられることもあります。経営者がどれだけ優しい人であっても、社員は怒る時は怒ります。

経営陣が社長ひとりであったり、社長以外の経営陣が社員に過度に迎合しているような状況になると、社員の怒りの矛先は社長に集中することでしょう。

社長に組織の怒りが集中すると、どんどん悪循環に陥ります。怒りが適度に分散されるように経営陣で役割分担をし、社長が発するビジョンやひとつひとつの言葉が社員の心に響く状態を意識的に設計するのが望ましいです。

共同創業であれば最初からうまく役割分担することも可能なので、それはひとつのメリットとも言えるかもしれないですね。

 

最後に

 

怒りっぽい性格の人に共通するもうひとつの特徴として、支配欲が強いことが挙げられます。経営者やマネジメントになった途端に人を支配しようとするのはなぜなんでしょうか?わかるような、わからないような・・・。 

この辺の課題解決に新規事業立案のヒントがあったりしないかなぁとも思ったり。そういう意味でも興味深いテーマです。

 

シード期の事業計画(数値計画)の作り方

 

ここ最近スタートアップの事業計画(Excelで関数を駆使して作る数値計画)をレビューする機会が増えているのですが、その大半が「絵に描いた餅」になっています。

ありえない成長率で3年後に売上数十億円とか、営業利益率80%超えとか、デイリーのアプリダウンロード数が数万DLとか、そんなのばっかりです。ちなみに上場企業の営業利益率は平均で5%程度、クックパッドやミクシィのような高収益企業でも50%くらいが上限値です。

正直言うと私も昔はそんな感じでした。投資家に見せる資料でもあるので、未来の数字を少しでもよく見せたいという心理が働くんですよね。

このような事業計画を作ってしまうと走り始めた翌月からあっという間に予実が乖離していくので、現実の経営に全く役立ちません。今月も目標には全く届かなかったねぇで終わってしまい、それに慣れるとやがて誰も事業計画を見なくなります。そうならないためにもきちんと機能する事業計画を作ることをオススメしています。

支援先スタートアップのビジネスモデルの理解を深めるために勝手に事業計画をシミュレーションしてみることもあるので、自分で事業計画を作る際に気にしているポイントを少しご紹介します。

 

ビジネスモデルが壊れていないか検証できるようにする

 

自社のビジネスモデルを検証するためには事業成長に必要な変数を把握する必要があります。

その中でよくあるのがサービスの原価が過小に見積もられていたり、そもそもまったく考慮されていないケースです。仕入れや在庫が発生しないネットビジネスは利益率が高いなんてよく言われますが、原価的な要素は意外とたくさん潜んでいます。

例として「Botっぽいんだけど裏側は人力で対応している」みたいなサービスを挙げてみます。最近のAIブームも相まってこのようなサービスは増えてきていますね。まずは人力でやるところから始めて、データを蓄積しながら徐々にAIに置き換えていくという成長ストーリーです。

1人のスタッフが1日に対応できるユーザー数には限りがあります。例えば1人のスタッフが1日に対応できるユーザー数が50人だとすると、サービスのDAUが10,000人になった時にスタッフが200人必要ということになります。この人件費は原価であり、サービスの成長に比例して原価も上昇するという、粗利の出にくいモデルだと解釈できます。

DAUは1年後に10,000人になっているのに対応スタッフは5人しかいないといった計画になっているとしたら、上記の構造と矛盾しているので修正する必要があります。この場合はDAUとスタッフ数を関数で紐付ける必要があります。Excel上でこの数字を紐付けたとしても、1年間で200人も増やすことは現実的に可能なんでしょうか。採用の工数も予算も必要ですよね。それができないなら、対応スタッフの増員ペース次第ではユーザー数をセーブしなければいけないという状況になります。そうなれば成長ペースも鈍化します。

一方で、1年後にほぼ完全なAIに置き換わっているから対応スタッフは5人で良いという解釈もできないことはありません。人力の対応スタッフは確かに不要になるので一見すると原価率が改善して良さそうな感じがします。ただ、その時点の学習量でAI化が本当に実現できるのか、それを実現する開発体制をどのように構築するのかを冷静に考える必要があります。とてつもなく優秀なエンジニアとものすごいマシンスペックが必要になるかもしれないですね。

このようにして洗いだされたサービスの原価は、広告宣伝費にいつからどのくらいの予算を投下できるかといった設計や、その際の目標CPA(ユーザーの獲得コスト)といった数値に対して大きく影響してきます。

それらを微調整していった結果、「先行投資がかさんで粗利が出るまで3年かかる(粗利の話なのでまだ黒字化ではない)」「1人の課金ユーザーを獲得するためのコストを◯◯円以内(どうやっても無理な金額)に抑えないと営業損益が黒字化しない」みたいなことが起きたりします。

この時点でビジネスモデルは壊れているわけですが、だからといって即アウトかというかというとそういうわけでもありません。まずは自社の現在時点の事業構造を正しく理解して、その上で何をいつまでにどう改善すべきなのかを考えられるようにすることが重要です。

 

現実感ある生々しい数字で組み立てる

 

例えばターゲットユーザーが絞られていてかつ国内向けのサービスであれば、冒頭に書いたようなデイリーで数万のアプリダウンロードなんてまず不可能なので、もっと緩やかに成長しているか、ユーザーを刈り取りきって成長ペースは鈍化しているはずです。

法人向けの営業モデルであれば、1人の営業スタッフが月次で100件新規受注しているとか、ターゲットの企業数がそもそも10,000社しかないのに月次で1,000社の新規受注になっているといったおかしな計画は是正する必要があります。

アクティブ率や課金率など、ビジネスモデルを構成する細かい指標についても同様のことが言えます。

シード期において、資金調達をした翌月から業績が急激に伸びるということも通常考えづらいです。資金調達をしたらまず採用をしたり、グロースのための小さな仮説検証の繰り返しに予算を充てるなどの準備期間が必要です。実際にサービスが成長し始めるのは、いろいろな仮説検証の結果、勝ち筋が見えてきた時です。

こういうストーリーなら確かにありえそうかなと思えるところまで、計画をブラッシュアップしていきましょう。

 

良い事業計画とはどのようなものか

 

シード期における良い事業計画とは、以下の3点が押さえられたものではないでしょうか。

  • ビジネスモデルの構造が可視化され、検証と改善の指針になっていること
  • バラ色の事業計画ではなく、少なくともここまでは行けそうという計画になっていること
  • 「こういう事業計画なのでこういう資本政策になっています」と言えるものになっていること 


私は投資家ではありませんが、もし自分が投資家であれば、そこがどれだけ考えられているかを起業家に問いかけながら、事業のアップサイドがどのくらいあるかをシミュレーションしたり、時にはそこを一緒にブラッシュアップしたりすることでしょう。

この辺のテーマは要するに管理会計の話で、私もインプット量とアウトプット量を増やしながら試行錯誤しているところです。最初の起業前にもっとしっかり学んでおけば良かったなぁなんて思ったりもしますね。

ビジネスモデルの構造把握は自分自身の学びにもなるので、事業計画の作り方で悩んでいるスタートアップの起業家の人はぜひ気軽にご相談ください。

 

マインドパレットについて

1年前に離れたマインドパレットの終了にあたり、Facebookの方にメッセージを書いておきました。こちらのブログからも辿れるようにしておきます。

https://www.facebook.com/kobayashiyuji.1981/posts/1001121933304559

私については変わらず元気にやっておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

 

マイナスのエネルギーからは意識的に離れよう

エネルギーと言うと若干スピリチュアル臭がしますが、やっぱりこの単語が一番しっくりくるのでそのまま書きます。

会社の内外で様々な場所に顔を出していると、愚痴や恨み言や嘲笑ばかりしている人たちの集まりに出くわすことがあります。

例えばベンチャーであれば、少なからず課題や矛盾を抱えているのが当たり前です。それを解決していくのが仕事とも言えます。どうやったら今より良くなるかの問題解決から目を背けて、後ろ向きな会話ばかりしていると、いつの間にか自分自身がマイナスのエネルギーに取り込まれてしまうことになります。

それに気付かず泥沼に陥りかけた過去もあり、最近はそういうコミュニティからは意識的に距離を置くようにしています。
(ただし、自分が当事者として彼らをマネジメントする立場であれば話は別です。距離を置く以外の何らかの問題解決方法を考える必要があります)

 

悩みがあるのは当たり前、その上で誰と話すか

 

誰にでも悩み事があるのは当然なので、相談できる相手が居るに越したことはありません。

その中にも、良い意味でただ話を聞いてくれるだけの人、話を聞きつつ前向きな方向性を示してくれる人、マイナスのエネルギーにさらに引きずり込もうとする人など、いろいろなタイプがいます。

もし相談できる相手が複数思い浮かぶなら、今どんなコミュニケーションがしたいのかを考えてから頼るのが良さそうです。

 

プラスのエネルギーを得られるような行動習慣を

 

プラスのエネルギーや影響を受け続けると、自分自身にも自然と活力が出てきて、それが意識、発言、行動習慣にも現れるようになります。

自分自身が話をしている時も「今ちょっと愚痴が多めかな」と思ったら、意識的に話の仕方を切り替えてみるなど、ちょっとした工夫を増やしてみるのもありです。

ワクワクする未来の話やチャレンジングな問題解決の話は、自分がするのも楽しいし、誰かにされるのも楽しいです。身近でそういう機会を感じられる人や場所が少ないと感じるのであれば、それを増やすために外に出て、自分から求めに行くのも良いかと思います。

 

まとめ

 

日々いろいろなことが起きる中で、せっかくならワクワクできる環境に身を置いて、明るく楽しく生きたいなぁということです。

 

2016年のシードファイナンスや起業の形など

私の最初の起業は2010年の秋、プロダクトをローンチしたのが2011年の春でした。

スタートアップのエコシステムが整備され始め、スマホブーム到来という期待感もあって追い風が吹き始めたと思っていた矢先、東日本大震災が起きて先行き不透明感が一気に増したのが当時の状況でした。

そして、その当時以来の難しい状況がやってくると言われているのが2016年です。

日本や米国では、2016年はスタートアップの投資環境が一気に冷え込むというのが業界の共通認識になっています。

forbesjapan.com



この環境変化に対して特に大きな影響を受けやすいのは、シリーズA以降の投資をすでに受けているスタートアップです。

想定される主な影響は以下のあたりで、私の周りでもすでにその兆候は出始めています。

  • 高すぎるバリュエーションが原因で、次のラウンドの投資を受けることが難しくなる
  • 上がりすぎたバーンレートを適切なレベルにコントロール必要が出てくる
  • 株価の下げ圧力が強まってIPOが難しくなる
  • 大手の事業会社が保守的になり、最近活発だったスタートアップの買収も短期的には減りそう



すでに事業を始めているスタートアップの動き方については、以下の記事が参考になります。

newspicks.com

 

シード銘柄は選別がありつつも投資はされる

 

2016年に起業を予定している人たちは、資金調達の観点から見た場合にどう動くのが良いのでしょうか。

一般的に、起業家サイドも投資家サイドも「不況期は仕込み時」と言われます。

起業家サイドで見ると、不況期は好況期とは異なる事業機会を見つけるチャンスです。例えば業務効率化や節約など、コスト削減に寄与する性質のサービスが強い傾向にあります。また不況期は安定志向の人が増えて起業家の母数が減り、競争は少なくなるとも言われています。

投資家サイドで見ると、一部の投資家は日和見的な感じで投資活動をやめてしまうものの、景気循環や投資環境の歴史から学んでいる投資家はここぞとばかりに投資をしてくるのがこの時期です。

バブルのような状況もある程度収束し、これからしばらくは徐々に適正なバリュエーションに落ち着いてくると思われます。投資家からすると仕込み時期としてその状況は好材料です。

またここ1〜2年は、シリーズA近辺のラウンドで選別された一部の銘柄に資金が集中するという流れがすでに起きていましたが、シードラウンドでもそれに近い状況になってくることでしょう。

全体としての投資件数は減りそうですが、ポジティブに解釈をするなら、やるべき準備をきちんとやっていれば投資を受けることはまだまだ可能な状況だとも言えます。

 

2016年起業組は、焦らず着実な経営基盤作りを

 

資本政策を始めとして、選択肢を多く持てる状態をキープしておくことは経営において極めて重要です。

例えば今であれば、会社員を続けながらでも事業の仮説検証やプロダクト開発はできます。チームもプロダクトも無い状況下で勢いで会社を辞めたりすると、まずキャッシュフローの面でコントロールが難しくなってきます。

  • 良い経営チームを作る(ヒト)
  • 良い市場と戦略を見つける(カネ)
  • 良いプロダクトを作る(モノ)



この3つにある程度メドが立ってくれば、おのずと勝ち筋が見えてきます。いざアクセルを踏むとなった時にしっかり加速できるように、粘り強く準備に費やす1年間にするのが良いのではないでしょうか。