STARTUP DESIGN

「シリアルアントレプレナーに負けないくらいの強い会社を作ろう!」が基本コンセプト

共同創業者候補をどうやってチームに引き込むか

良いアイデアが思いついて、本気で事を成そうと思ったら、アイデアを形にできるチームを早期に作る必要があります。

ひとりだと優先順位付けがめちゃくちゃになりやすく、得意なことや今やるべきことに自分の仕事をフォーカスできないですし、その状況下でも誰にも責任を負わなくてもそれで済んでしまいます。結果として「まぁしょうがないか」という感じで、いつの間にか起業そのものがずるずる後回しになりがちです。

共同創業者を迎え入れることはチーム力を引き上げるという分かりやすいメリットだけでなく、自分以外の誰かに対してコミットメントという形で責任を果たすことで、状況を前進させやすくなるということにも繋がります。

 

共同創業者にどんな人を選ぶと良いのか

 

リソースが限られている初期のフェーズにおいては、自分でできることは自分で巻き取るべきだと考えます。その点で共同創業者の関係性として、「長所と短所が互いに補完関係にあること」はとても重要です。

得意分野が同じ人を仲間に引き込むのは、経営に集中するために現場の業務を自分から切り離す必要が出てきた場合など、もう少し後でも良いでしょう。

それ以外の要素として、少なくとも以下の3つが満たされていることをお互いに確認し合いましょう。投資家選びと同じで、この段階で違和感があるような相手なら組まない方が良いです。

  • ビジョンが一致していること
  • 実行力がある人
  • 自分より明らかに優秀だと思える要素があること
  • 人物的に尊敬でき、人を巻き込む魅力があること


初期にこれらが備わっているチームであれば、会社をステップアップさせていく過程で、今以上に優秀で多様な人材を呼び込むこともできるようになります。

 

なぜあの人は共同創業者になってくれないのか

 

よくある例えですが、『共同創業者選び』と『結婚』はとてもよく似ています。共同創業者が見つからない理由というのはシンプルで、あなたという人物が相手に響いていないからです。

事業アイデアがピンと来ない、うまく行かなそうな気がするという理由で断られるというケースもありますが、ゼロから一緒になって事業を考えて、それで成功するチームだっているわけですから、実はこれは些細な話だったりします。

あなたの魅力が無いわけでなく、伝わっていないだけというケースももちろんあるので、そこで自信を無くす必要はありません。むしろ、自分がどんな世の中を作りたいのか、どんな企業文化にしていきたいのか、共同創業者候補をどのようにワクワクさせることができるのかということを徹底的に考え、それらを自信を持って語り尽す必要があります。

いざ起業しようと思った時に、パッと共同創業者候補が出てこないというのはとてもまずい状況です。

勉強会やイベントなどで知り合った人を誘うにしても、誘われる立場からすると、まだよく分かっていない人から「あなたが気に入ったので、私と一緒に起業してくれませんか?」と言われるのは、「今日初めてお会いして一目惚れしたので、結婚してもらえませんか?」と言われるのと同じくらい理解できない話です。

まず相手を理解する時間と、あなたという人物をよく知ってもらう時間が必要で、そのためにも普段の仕事の中で人との関わりをある程度深いレベルで持っておく必要があります。

ちなみに共同創業者になるような人とは、金銭面のインセンティブやフルコミット前のお互いの時間の使い方について、互いを尊重して誠意を持って話し合う必要はあります。ただしどれだけ能力的に秀でていようと、事業の話そっちのけでそのことばかり気にしてくるような人は巻き込まない方が良いです。遅かれ早かれ破綻することになります。

 

まとめ

 

例えばエンジニアであればプロトタイプを作る所まではひとりでできることでしょう。

しかし、それを世の中に売り込んだり、資金調達をしたり、新しく優秀な人材を採用したりというのは、エンジニアリングとは違うスキルになります。

これらは全て誰かしらの人を巻き込む仕事で、人を巻き込めないチームは決して強くならないですし、そういうチームが運営する事業が成長することもありません。後々の事業の飛躍を考えると、優秀な人材を共同創業者として巻き込むという試練はぜひクリアしておきたいところです。

相手にとって魅力的だと思えるビジョンを提示し、あなたに賭けてみたい!と思ってもらえるような関係性を丁寧に構築していく所から始めましょう。

 

スタートアップの肩書きを機能させる(CEO、CTOなど)

スタートアップとして起業する時に、単に代表取締役や取締役ではなく、CEOやCTO、COOといった肩書きを付けるケースは珍しくなくなってきています。スタートアップの事情を知らない人たちから見ると、ちょっと気取った感じに見えなくもないですが、私はこういう肩書きを付けること自体には反対ではありません。

ただし、創業期に安易にCTOやCOOなどの肩書きを付けると、それが原因で後々揉めることがあります。

肩書きで起きる問題は肩書きで解決しよう(もちろんそれが全てではないですが)ということで、少し考えてみたことを書いてみます。

 

プロダクトのグランドデザインに対して最終決定権を持つのはCEO?CTO?

 

例えば、ビジネス系出身のCEOと開発系出身のCTOというチームで起業した場合、プロダクトのグランドデザインに対して最終決定権を持つのはどちらでしょうか?CEOでしょうか?それともCTOでしょうか?

この場合、「プロダクト統括責任者」のような肩書きをどちらか一方に兼任させることで、役割はいくらか明確になります。

CEO 兼 プロダクト統括責任者
もしくは
CTO 兼 プロダクト統括責任者

プロダクト統括責任者の部分は、CCO(Chief Creative Officer)やプロデューサーでも良さそうですね。

またCTOという役割について、「経営状況や事業戦略に対して、インフラや技術の選定などで責任を持つ」「社内外への技術ブランディングに対して責任を持つ」など期待する事項が明確になっていれば、「スキルが足りないけれど企画力はあるエンジニアにCTOという肩書きを付けてしまった」という問題も防ぐことができます。

 

COOって何をする人?開発以外のこと全般?営業責任者?

 

COOの役割もまた、不明瞭になりがちです。

経営幹部であるCOOと現場のマーケティング責任者が別で存在していて、メンバーがどちらに相談事を持って行ったら良いのか分からない。COOが実質的に営業部門の責任者であるにも関わらず、後から入社した人はマーケティングや採用までやる人だと思っていて、「この人はCOOなのに、全然その仕事をしてないじゃん・・・」となってしまう。

こういうケースを防ぐために、COOが何に責任を持っていたり期待されていたりする人なのか、社内的に明示しておくであったりとか、場合によってはCOOという曖昧なポジションを排除して、CMO(Chief Marketing Officer)、営業統括責任者、採用戦略担当などの肩書きに細分化してしまうことまで検討してみましょう。

重要なのは、何らかのリーダー的ポジションにいる人物が、何に責任を持っているのかを分かりやすく社内に示すことです。

 

足りないポジションを兼務で表現するという発想

 

「本当は別の人をアサインしたいのだけれど、適任が見つからない・・・」という時も、肩書きを兼務にしてしまうという方法もあります。

例えば営業責任者として優秀な人材を探している期間中だけ「CEO 兼 営業責任者」にするであるとか、同様な感じで「CTO 兼 CCO」「COO 兼 採用戦略担当」のようにして、実際に採用できたら分割していくという発想です。

「この兼務状態を外してくれる人を早くみんなで見つけよう!」的な意思表示ですね。

 

自身に不足している能力を自覚するために肩書きを付ける

 

戦略という視点が足りず、場当たり的な経営判断ばかりで失敗していたという話は、スタートアップあるあるです。これに気付いたら一歩前進、戦略の設計と運用までちゃんとできたらさらに前進です。

この視点が不足しているという自覚があるCEOは「CEO 兼 CSO(Chief Strategy Officer)」という肩書きを自身に付けた上で、戦略の設計と運用を社内にコミットしてみましょう。

ビジョンが現場に浸透せず、仕組みにも落としこまれず、形骸化してしまっているという話もまた、あるあるです。ビジョンが元々無くて、ある日になってその重要性に気付いた、というケースもよく耳にします。

こういう場合は「CEO 兼 CVO(Chief Visionary Officer)」という肩書きを自身に付けた上で、ビジョンが正しく機能するための社内制度であったりとか、人材採用であったりとか、日々の啓蒙に対してコミットしてみましょう。

CSOにしろCVOにしろ、それを付ける以前とは経営者としての振る舞い方も、社内のメンバーの経営者に対する見方も何らか変わってくることと思います。地位が人を作るという発想です。そんなことしても現場は冷めてるし・・・的な答えが返ってくるような会社は論外なので、別の施策が必要かもしれないですね。

 

各役割のコミットメントの達成度をどう測るか(課題)

 

実際に肩書きや役割を明確にしたら、期待された役割に対するコミットメントの達成度をどう測るかが次の課題になります。特に経営幹部の場合、基本的には上長がいなかったりするので、一般的な評価制度をそのまま用いるのはかなり難しそうな感じがします。

かといって、経営幹部間で相互評価するとか、VCから派遣された社外取締役に評価してもらうとかというのも微妙です。前者は得意領域が違いすぎる割に立場が近すぎますし、後者は常に会社にいるわけではないので、まぁ正しく評価できないでしょう。言ってしまえば、素直に受け入れにくいというわけです。

初期的にはもう少し緩めに、現場のメンバーから定性的なフィードバックを得るくらいでも良いかなとは思います。

 

まとめ

 

深い意味を考えずに肩書きを付けるくらいなら、普通に代表取締役や取締役などで良いと思います。一度CTOのような肩書きを付けてしまうと、後からもっと良い人材が入ってきた時にプライドが邪魔して変えづらいということもあり得ますし。

その意味で、会社の状況に応じて肩書きは変化する、肩書きはうまく活用するものだということを共通認識として持てておくと、運用により柔軟性が出てきそうです。

冒頭に述べたように、肩書きの整理が社内のあらゆる課題を解決させるわけではありません。一方で、こういう細かいこともこだわって考え抜いてみることで、自社の課題が明確になったり、経営基盤をより強固なものに進化させることができたりもします。

 

イベント「起業家を取り巻く環境のこれまでとこれから」を開催しました!

「STARTUP DESIGN #1 〜 起業家を取り巻く環境のこれまでとこれから 〜」というイベントを10/2(金)の夜に開催しました!有料にも関わらず、起業経験者を中心に50名を超える方々にご参加いただきました。

本イベントを開催するに至った経緯というか、私自身がスタートアップ環境に対して抱いている課題感はこちらの記事に詳しく書いてあります。

www.startup-design.jp

 

今回は「生々しく」をキーワードに、起業家、投資家、メディアそれぞれから見たスタートアップの景色について話をしました。

 

投資家パートとしてご登壇いただいたのが、グロービス・キャピタル・パートナーズの高宮さん。「冬の時代に備えてベンチャーがすべきこと」というテーマで講演していただきました。

 

続いて起業家パートとして登壇したのが私。「スタートアップの地雷、情報格差、それらを踏まえた戦い方」というテーマで講演しました。

 

そして座談会。モデレーターとしてTechCrunchの岩本さんにも加わっていただき、「ヒト・モノ・カネ」について話をしました。

 

起業家の人がほとんどだったので、懇親会も熱量がとても高くなりました。

 

  • 登壇でご協力いただいた高宮さん、岩本さん
  • 会場として「World Lounge Shinjuku」を提供していただいた住友不動産さま
  • 運営に協力していただいたみなさま
  • そしてご来場いただいたみなさま

本当にどうもありがとうございます!みなさんのおかげで素晴らしいイベントになりました。

今回は私がフリーになって初の主催イベントでした。次回以降、「チームビルディング」「資金調達」「プロダクト」などの個別テーマでも開催したいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします!

 

スタートアップとして初めて起業しようとしているみなさんに伝えたいこと

スタートアップという世界について、「初めて起業する人や若い人が起業しやすい環境になった」という人がよくいます。2年くらい前までなら自分もそう思っていましたし、10年前との比較で言えばそれはそうなのかもしれませんが、最近の世の中の流れを見ると、2〜3年前に起業した人たちと比べて確実に厳しい状況に近づいています。

未だにそれを言っている人がいるとしたら、そういう起業家が増えることで実益が出る人のポジショントークか、状況を正しく認識していないかのどちらかです。私自身は起業家が増えることは大歓迎ですが、前提として私自身の経験や知っている情報について、私自身も起業経験者(かつかなりの失敗をしている)だからこそ伝えられる生々しい内容を可能な限り提供するようにしています。その上でチャレンジするなら猛烈に応援しますし、知らないより絶対に知っておいた方がいいよ、というスタンスです。

なぜ新米起業家にとって厳しい環境になりつつあるのかについて少し詳しく説明します。

日本でスタートアップのエコシステムを作る動きがようやく本格化し始めたのは5年ほど前のことです。当時は「スタートアップ的な成長モデルの作り方」についてあらゆる面で情報が乏しく、ちょうどスマホという新しい文脈のテクノロジーが出てきたばかりであったことも重なって、ある意味みんな横一線からのスタートでした。

そこから数年を経て少しずつ勝ちパターンと負けパターン(特にこちらが重要)が体系化されてきて、成功する起業家も出始め、彼らは最初の起業で得た豊富で質の高い情報や人脈といった資産を武器にシリアルアントレプレナー(=連続起業家)となってまた新たなチャレンジをし始めています。

これが意味していることは何か。

スタートアップのエコシステムは彼らにとってはより有利な状況に、新米起業家にとっては相対的に不利な状況に作用し始めているということです。言い換えると、起業家が保持する質的・量的な情報格差が企業価値にダイレクトに反映される状況に近づいているとも言えます。

・共同創業者選び
・チームビルディング
・資本政策
・投資家との関係性構築
・プロダクト開発におけるコンテンツやデータの価値の見極め
・市場の見極め
・ブランディング


・そして起業家自身の価値


これらの要素に関するひとつひとつの小さな情報格差が競合に対するとても大きな企業価値の差となり、それによって調達できる資金などの選択肢が増え、さらにレバレッジを効かせることができるという話になるわけです。

「スタートラインはもはやみんな横一線では無い」という事実は正しく認識しておく必要があります。

 

新米起業家は厳しいスタートアップ環境にどう立ち向かうべきか

 

よく言われる「走りながら考えろ」というメッセージはほぼその通りなんですが、少し言葉足らずです。適切に考えて判断していくためには、その材料となる情報が必要です。

F1においてブレーキの掛け方を知らずに全速力でコーナーに突っ込んでも事故るだけなので、適切なブレーキングテクニックを身につけることで早くゴールできる、いきなりそこまでできなくても、少なくともブレーキを掛けてコーナーに入る必要がある、ということは最低限知っておきましょう。その上でF1に臨み、ドライビングのコツを掴んでいくことで、どこかで他のプレイヤーをごぼう抜きするチャンスが生まれるかもしれない。起業とはそんな感じの世界です。

ではどこに情報を求めたら良いのか?という話について。

情報格差が出てきているということは、より良質な情報を持っている人は確実にいるということです。しかもスタートアップのコミュニティは狭いので、案外身近にいたりします。それに気付いていないか近づくのをためらっているだけです。

中でもVCなどの投資家に会って話をするのは一番最速で効率は良いんですが、それだけだと正直不十分です。

スタートアップの起業経験者、それこそシリアルアントレプレナーのような人たちの所に自分から出向きましょう。

チームビルディング、プロダクト開発、資金の使い方などについて、起業の当事者として泥臭い取り組みも経験してきた人たちの言葉は、その経験に相応しく重い物です。なるべく早い段階で彼らの経験や知恵を借りて、「他の人からは出てこないような性質の」情報格差を埋める。

これは少し時間も掛かる作業なので、そういうことをやっているくらいならプロダクト開発をしていたいという思いを持つ人もいるかと思います。しかしこれは、確実に会社に価値をもたらす、経営者としてやるべき仕事です。

その上で、情報の洪水の中から判断を下すことに対して責任を持つこと。そして実行すると決めたら、ためらわず果敢に実行にすることが重要です。

 

私自身のスタートアップに対する課題感について

 

なんらかの経営判断によって作用する力学について、起業家の間での認知がまだまだ全然進んでいない印象です。これはシード・アーリーの起業家からいろんな状況に関する相談を受ける中で感じた、スタートアップのエコシステムに対しての強烈な課題感です。私が初めて起業した5年前と現在とで、その状況はほとんど変わっていないなぁと思っています。

判断に足るだけの適切な情報が手元にある上でどういう判断をするかはその人の責任ですが、そもそもの適切な情報が(それを届けられる位置で起業家を見ている人たちが多数いるにも関わらず)届いているとはあまり思えません

5年前から現在に至る過程で私自身がしたような失敗と同じ失敗をしていたり、崖の一歩手前にいる起業家が本当に多い。一方で、あとこの部分さえ引き上げられればまだまだ可能性がありそうという起業家もたくさん見てきています。

私もスタートアップのエコシステムの末端にいる人間として、微力ながらそういう彼らを支援していきたいと考えています。

 

イベント告知など

 

というわけで、10/2(金)の夜にシード・アーリーの起業家のみなさんを対象にしたイベントを行います!

peatix.com



グロービス・キャピタル・パートナーズの高宮さん、TechCrunch Japanの岩本さんにもご登壇いただく予定です。起業家、投資家、メディアそれぞれから見たスタートアップの景色について熱量高くお伝えできればと思っています。

こちらのイベントについて興味がある方はぜひご参加ください!(残席が少ないのでお急ぎください!)

 

あなたのスタートアップのビジョンは機能していますか?

社会の役に立つ素晴らしい事業を作るためには、強いチームが必要です。強いチームを作るためには魅力的で優れたビジョンが必要です。

では「魅力的で優れたビジョン」とは何でしょうか?

ビジョンを策定する際の大前提として、単語のひとつひとつが腹落ちしているか、経営者自身が本当にそれを実現したいと思えるか、真摯に向き合うことができるかが重要です。

壮大で崇高なビジョンでなくても構いません。身の回りの少数の従業員や顧客を幸せにしたいというのも立派なビジョンになり得ます。フワッとした抽象的・概念的な文言でもOKです。

その大前提を踏まえて、ビジョンは機能しなければ意味がありません。機能しないビジョンはただのお題目です。魅力的で優れたビジョンは機能性を持っています。そこで今回は「ビジョンの機能性」について書くことにします。

 

機能するビジョンはあらゆる判断軸の土台になる

 

例えば「テクノロジーで教育を変える」というビジョンを持つスタートアップがあるとします。その場合、まず最初の判断として、当然事業を教育もしくはその周辺分野にフォーカスさせるはずです。

経営をしていくうちに「やったことないけれど、ゲーム事業の方が儲かりそうだ」のような誘惑がどこかで出てくるかもしれません。この場合、ビジョナリーな経営者は単に儲かりそうだからという理由でゲーム事業に参入するような判断はしません。場合によっては「教育 × ゲーム」のような判断をすることはあるかもしれませんが、それはあくまでビジョンを実現するための手段です。

人材採用においてもビジョンは当然重視されます。「テクノロジーで教育を変える」という言葉に共感して未来を一緒に考えてくれる人、原体験としてそういう分野での課題意識がある人、ビジョンを実現するために必要なバリューを持った人などを、初期の頃から意識的に集めるべきです。

ビジョンを機能させるには、上に挙げた以外にも福利厚生や評価制度など、会社に関わるあらゆる物事をビジョンから落とし込んで設計する必要があります。

 

機能するビジョンは行動に一貫性を与える

 

スタートアップで働くメンバーの中には、経営者の日々の発言や経営判断に一貫性が無い感じがして振り回されていると思っている人も多いと思います。スタートアップにおいて朝礼暮改が日常茶飯事なのは事実です。

その場その場の経営判断だけではどうしても「点」の話になり、意図が正しく伝わりません。

この課題に対して「それを行うことで、ビジョンの実現にどう近づくのか」ということ、つまり「線(=ストーリー)」の部分についてメンバーの理解があるかどうかだけでも全然違います。

リーンスタートアップのように仮説検証を繰り返している局面では特にこれは重要です。初期の頃は日々判断を変えていかなければならない。そのためには昨日決めたことをやめなければならないこともある。場合によっては全く違うアプローチをすることもある。これらの話をビジョンに到達するための逆算したストーリーとして経営者がメンバーに説明して理解してもらうという、いわゆるマインドセットの共有が必要になります。

これができていると社内でのあらゆる活動はビジョンを実現するための手段として紐付くため、同じ朝礼暮改であってもメンバーの納得感は遥かに得やすくなります。

 

機能するビジョンはメンバーへの約束事になる

 

ビジョンは会社が到達する未来を指すだけではなく、そこで働くメンバーへの約束事です。言っていることとやっていることが違えば彼らの心はあっという間に離れます。

言い換えれば、ビジョンが正しく機能している状態の時、それは会社における強力な求心力になります。多少業績が厳しかろうと、いきなり状況に大きな変化が訪れようと、ビジョンが仕組みや企業文化にまできちんと落とし込まれていれば、そこに共感して集まってきてくれたメンバーたちは一緒にその困難を乗り越えてくれるはずです。

 

ビジョンが機能するかどうかは経営者次第

 

真にビジョナリーは経営者はビジョンに対して常に忠実です。いつも同じことを同じフレーズで言い続け、それが実際の行動にも結びついているため、彼らが発する言葉には非常に重みがあります。

ここに書いたような内容は、見方を変えれば柔軟性を欠くようにも見えるかもしれません。しかし意識して実践してみれば分かりますが、実際はそれ以上にメリットの方が多いです。

もうひとつ大事な話として、「そもそもあなたはなぜ起業をしたかったのか?」ということもあります。起業して5年、10年、20年経ったあと、会社はそのビジョンに本当に近づいたのか。ただ売上が増えただけの、創業者自身にとって何の魅力も無い会社になっていないか。

私は「創業者のビジョンと全く違う会社になってしまうこと」は、経営における大きな失敗であり、もし自分がその当事者だったら、何よりもそのことにとても後悔するだろうと思っています。

だからこそ自分自身のビジョンに対して常に忠実であり続けたいです。

 

Nice to have(あったら嬉しい)なサービスをスケールさせるのは難しい

  • あなたのサービスは誰のどのような課題を解決していますか
  • それが証明できる定量的なデータ(事実情報)はありますか

 

この2つの問いに対して明確な答えを示せないなら、あなたが提供しているサービスはNice to have(=あったら嬉しい)の域を出ていない可能性があります。

そして、そういうサービスを事業としてスケールさせていくのは非常に大変です。

 

Nice to haveはユーザーが離脱する

 

Nice to haveなサービスのわかりやすい特徴として、ユーザーの離脱が早く、戻ってもこないことが挙げられます。例えば1週間使っていなくても何も困らないアプリとか、同じジャンルの別のものを使っても特に問題が無いアプリとか。

この手のプロダクトはAppStoreやGoogle Playのようなアプリプラットフォーム上で展開すると特に厳しいです。ランキングの維持にアクティブユーザー数が重要なのに、離脱が激しいためにそれが確保できない。口コミによる伝播が見込みにくい。結果として、自然流入による流入が維持できず、アドネットワークなどの広告流入に過度に依存した事業になりがちです。

 

Nice to haveをマネタイズするのは難しい

 

Nice to haveなサービスはマネタイズも困難です。無料でユーザーを集めるようなフリーミアムモデルの場合、課金タイミングですでにユーザーの大半が離脱しています。当初から有料なサービスの場合、「あったら嬉しいけれど、お金は払いたくないから別の手段で代替しよう」となりがちです。広告モデルでマネタイズしようとしても、目新しさで広告枠を購入してくれるクライアントはいても、効果が出ないので継続しません。EC(ソーシャルコマースなど)はまぁ大抵の場合、論外です。

 

スケールさせるにはMust have(必要不可欠)であることが必須

 

サービスをスケールさせるにはほとんどの場合、Must haveである必要があります。Must haveなサービスは誰かの課題を明確に解決しています。

(例)
Googleマップが無いと目的地にたどり着けない(しかもそれが無料で使える)

また、Must haveなサービスは、無いと困ったり不安になったりするという要素を持っていることが多いです。

(例)
LINEを1週間使ってないと不安になる(重要なメッセージを見逃しているのではないか、友人コミュニティから自分が離れているのではないか)

これらの例は定性的な情報ですが、Must haveなサービスは、それが必要不可欠であるということが継続率などの定量的なデータとしても表れています。

 

誰にとってのMust haveかを考える

 

サービスを運営している中で、あるユーザーから見るとNice to haveであっても、別のユーザーから見るとMust haveであることがあります。そこを見つけてよく分析してみることで、それまで把握していなかったユーザーの課題の本質にたどり着くこともあります。

事業価値をそこにフォーカスしてみたり、場合によってはピボットしてみるのも手です。ただし特定ユーザーのMust haveにフォーカスしすぎた結果、ニッチになりすぎることもあるので注意は必要です。そこに市場があるのかという点と併せて判断する必要があります。

 

Nice to haveなサービスにいつ見切りを付けるか

 

基本的には初期の仮説検証段階で判断すべきです。Nice to haveなままアクセルを踏んでしまうと、事業計画と実態との乖離を始めとして多くの矛盾やねじれを生み出すことになります。

継続率があまりに低すぎるサービスの場合、チューニングによってそれが多少改善された所で焼け石に水だったりするので早めの撤退かピボットに踏み切っても良いと思います。

一方で、ある程度の期間サービスを運営し続けることで先に書いたようなユーザーの課題の本質にたどり着くこともあるので、一概に早く判断するのが良いとも言い切れない部分もあるのが難しい所です。

撤退基準を設けるなどして、ずるずる続けるのは避けたいですね。

サービスにいくら思い入れがあったとしても、会社の事業としてやっている場合はそれとは切り離した冷静・客観的な判断をすることが求められます。特にスタートアップの記事などで「◯◯(競合アプリ)が普及したのでこのジャンルはニーズがある」と主張しているのをよく見かけますが、あくまで◯◯(競合アプリ)がMust haveなのであって、自分たちが本当にそれになりうるのかはよく考えてみた方が良さそうです。

世の中の人が抱えている課題にズバッと刺さるようなサービスを作りましょう!

 

経営会議は何をする場なのか

「経営会議ってそもそも何をする場なんですかね?」

支援しているスタートアップの経営者がポツリとつぶやいた言葉です。印象に残ったのでこのテーマについて書いてみることにします。なぜ印象に残ったのかはハッキリしていて、私の中でちゃんと言語化できていなかったからです。

 

経営会議は何をする場なのか

 

いろいろと考えてみて、以下の3つにフォーカスしてみました。まだ言語化したばかりなので、実際に自分でやってみたりフィードバックをいただいたりする中でチューニングすることになるだろうとは思います。

◼︎ビジョンに対しての現状確認
会社のビジョンに対して、進んでいる方向が合っているかを確認する場

◼︎ 変化
大きな変化をもたらすようなテーマについての議論と意思決定をする場

◼︎ 一貫性
戦略(おおまかなストーリー設計)や、それを実現する企業文化の土台について議論と意思決定をする場

 

経営会議は何をしない場なのか

 

ざっくり以下のようなことは、経営会議で議論する性質のものでは無い感じがします。現場のメンバーと現場の時間軸に合わせてするべき話です。

 

  • 営業の進捗管理
  • 資金調達の進捗管理
  • 開発の進捗管理
  • プロダクトのコンセプトについて議論する
  • プロダクトのデザインについて議論する
  • 個々の業務のオペレーションや戦術を決める 

 

「資金調達の進捗管理」のように明らかにボードメンバーでないとできない要素も含まれていますが、これも実は経営会議からは切り離した方が良さそうです。会話の内容が細かすぎて時間が取られるのと、経営会議にありがちな「1週間に1度の定例」のような形がスピード感として本当に合っているのか、という疑問もあります。ボードメンバーのみで行う現場のオペレーション的な感覚ですかね。

あと創業初期の頃はボードメンバーしか会社に居ないケースもありますが、その場合でも「経営会議」と「現場の会議」は意図的に分けた方が良いです。経営会議でオペレーションの話ばかりしていたら、その会社の本質的な課題の発見や解決が遅れます。

 

まとめ

 

このような感じで言語化してみました。口頭だと忘れてしまうし、以前言っていたことに対して無自覚に変わってしまうこともあるので、文字にして残しておくのは大事ですね。

あと経営会議と同じような会社の機能に取締役会もあります。特に創業初期の頃は経営会議と取締役会の区別が無かったりもするので、これについても「そもそも何をする場なのか」を言語化しておくと良さそうです。