STARTUP DESIGN

「シリアルアントレプレナーに負けないくらいの強い会社を作ろう!」が基本コンセプト

シード期の事業計画(数値計画)の作り方

 

ここ最近スタートアップの事業計画(Excelで関数を駆使して作る数値計画)をレビューする機会が増えているのですが、その大半が「絵に描いた餅」になっています。

ありえない成長率で3年後に売上数十億円とか、営業利益率80%超えとか、デイリーのアプリダウンロード数が数万DLとか、そんなのばっかりです。ちなみに上場企業の営業利益率は平均で5%程度、クックパッドやミクシィのような高収益企業でも50%くらいが上限値です。

正直言うと私も昔はそんな感じでした。投資家に見せる資料でもあるので、未来の数字を少しでもよく見せたいという心理が働くんですよね。

このような事業計画を作ってしまうと走り始めた翌月からあっという間に予実が乖離していくので、現実の経営に全く役立ちません。今月も目標には全く届かなかったねぇで終わってしまい、それに慣れるとやがて誰も事業計画を見なくなります。そうならないためにもきちんと機能する事業計画を作ることをオススメしています。

支援先スタートアップのビジネスモデルの理解を深めるために勝手に事業計画をシミュレーションしてみることもあるので、自分で事業計画を作る際に気にしているポイントを少しご紹介します。

 

ビジネスモデルが壊れていないか検証できるようにする

 

自社のビジネスモデルを検証するためには事業成長に必要な変数を把握する必要があります。

その中でよくあるのがサービスの原価が過小に見積もられていたり、そもそもまったく考慮されていないケースです。仕入れや在庫が発生しないネットビジネスは利益率が高いなんてよく言われますが、原価的な要素は意外とたくさん潜んでいます。

例として「Botっぽいんだけど裏側は人力で対応している」みたいなサービスを挙げてみます。最近のAIブームも相まってこのようなサービスは増えてきていますね。まずは人力でやるところから始めて、データを蓄積しながら徐々にAIに置き換えていくという成長ストーリーです。

1人のスタッフが1日に対応できるユーザー数には限りがあります。例えば1人のスタッフが1日に対応できるユーザー数が50人だとすると、サービスのDAUが10,000人になった時にスタッフが200人必要ということになります。この人件費は原価であり、サービスの成長に比例して原価も上昇するという、粗利の出にくいモデルだと解釈できます。

DAUは1年後に10,000人になっているのに対応スタッフは5人しかいないといった計画になっているとしたら、上記の構造と矛盾しているので修正する必要があります。この場合はDAUとスタッフ数を関数で紐付ける必要があります。Excel上でこの数字を紐付けたとしても、1年間で200人も増やすことは現実的に可能なんでしょうか。採用の工数も予算も必要ですよね。それができないなら、対応スタッフの増員ペース次第ではユーザー数をセーブしなければいけないという状況になります。そうなれば成長ペースも鈍化します。

一方で、1年後にほぼ完全なAIに置き換わっているから対応スタッフは5人で良いという解釈もできないことはありません。人力の対応スタッフは確かに不要になるので一見すると原価率が改善して良さそうな感じがします。ただ、その時点の学習量でAI化が本当に実現できるのか、それを実現する開発体制をどのように構築するのかを冷静に考える必要があります。とてつもなく優秀なエンジニアとものすごいマシンスペックが必要になるかもしれないですね。

このようにして洗いだされたサービスの原価は、広告宣伝費にいつからどのくらいの予算を投下できるかといった設計や、その際の目標CPA(ユーザーの獲得コスト)といった数値に対して大きく影響してきます。

それらを微調整していった結果、「先行投資がかさんで粗利が出るまで3年かかる(粗利の話なのでまだ黒字化ではない)」「1人の課金ユーザーを獲得するためのコストを◯◯円以内(どうやっても無理な金額)に抑えないと営業損益が黒字化しない」みたいなことが起きたりします。

この時点でビジネスモデルは壊れているわけですが、だからといって即アウトかというかというとそういうわけでもありません。まずは自社の現在時点の事業構造を正しく理解して、その上で何をいつまでにどう改善すべきなのかを考えられるようにすることが重要です。

 

現実感ある生々しい数字で組み立てる

 

例えばターゲットユーザーが絞られていてかつ国内向けのサービスであれば、冒頭に書いたようなデイリーで数万のアプリダウンロードなんてまず不可能なので、もっと緩やかに成長しているか、ユーザーを刈り取りきって成長ペースは鈍化しているはずです。

法人向けの営業モデルであれば、1人の営業スタッフが月次で100件新規受注しているとか、ターゲットの企業数がそもそも10,000社しかないのに月次で1,000社の新規受注になっているといったおかしな計画は是正する必要があります。

アクティブ率や課金率など、ビジネスモデルを構成する細かい指標についても同様のことが言えます。

シード期において、資金調達をした翌月から業績が急激に伸びるということも通常考えづらいです。資金調達をしたらまず採用をしたり、グロースのための小さな仮説検証の繰り返しに予算を充てるなどの準備期間が必要です。実際にサービスが成長し始めるのは、いろいろな仮説検証の結果、勝ち筋が見えてきた時です。

こういうストーリーなら確かにありえそうかなと思えるところまで、計画をブラッシュアップしていきましょう。

 

良い事業計画とはどのようなものか

 

シード期における良い事業計画とは、以下の3点が押さえられたものではないでしょうか。

  • ビジネスモデルの構造が可視化され、検証と改善の指針になっていること
  • バラ色の事業計画ではなく、少なくともここまでは行けそうという計画になっていること
  • 「こういう事業計画なのでこういう資本政策になっています」と言えるものになっていること 


私は投資家ではありませんが、もし自分が投資家であれば、そこがどれだけ考えられているかを起業家に問いかけながら、事業のアップサイドがどのくらいあるかをシミュレーションしたり、時にはそこを一緒にブラッシュアップしたりすることでしょう。

この辺のテーマは要するに管理会計の話で、私もインプット量とアウトプット量を増やしながら試行錯誤しているところです。最初の起業前にもっとしっかり学んでおけば良かったなぁなんて思ったりもしますね。

ビジネスモデルの構造把握は自分自身の学びにもなるので、事業計画の作り方で悩んでいるスタートアップの起業家の人はぜひ気軽にご相談ください。