私の最初の起業は2010年の秋、プロダクトをローンチしたのが2011年の春でした。
スタートアップのエコシステムが整備され始め、スマホブーム到来という期待感もあって追い風が吹き始めたと思っていた矢先、東日本大震災が起きて先行き不透明感が一気に増したのが当時の状況でした。
そして、その当時以来の難しい状況がやってくると言われているのが2016年です。
日本や米国では、2016年はスタートアップの投資環境が一気に冷え込むというのが業界の共通認識になっています。
この環境変化に対して特に大きな影響を受けやすいのは、シリーズA以降の投資をすでに受けているスタートアップです。
想定される主な影響は以下のあたりで、私の周りでもすでにその兆候は出始めています。
- 高すぎるバリュエーションが原因で、次のラウンドの投資を受けることが難しくなる
- 上がりすぎたバーンレートを適切なレベルにコントロール必要が出てくる
- 株価の下げ圧力が強まってIPOが難しくなる
- 大手の事業会社が保守的になり、最近活発だったスタートアップの買収も短期的には減りそう
すでに事業を始めているスタートアップの動き方については、以下の記事が参考になります。
シード銘柄は選別がありつつも投資はされる
2016年に起業を予定している人たちは、資金調達の観点から見た場合にどう動くのが良いのでしょうか。
一般的に、起業家サイドも投資家サイドも「不況期は仕込み時」と言われます。
起業家サイドで見ると、不況期は好況期とは異なる事業機会を見つけるチャンスです。例えば業務効率化や節約など、コスト削減に寄与する性質のサービスが強い傾向にあります。また不況期は安定志向の人が増えて起業家の母数が減り、競争は少なくなるとも言われています。
投資家サイドで見ると、一部の投資家は日和見的な感じで投資活動をやめてしまうものの、景気循環や投資環境の歴史から学んでいる投資家はここぞとばかりに投資をしてくるのがこの時期です。
バブルのような状況もある程度収束し、これからしばらくは徐々に適正なバリュエーションに落ち着いてくると思われます。投資家からすると仕込み時期としてその状況は好材料です。
またここ1〜2年は、シリーズA近辺のラウンドで選別された一部の銘柄に資金が集中するという流れがすでに起きていましたが、シードラウンドでもそれに近い状況になってくることでしょう。
全体としての投資件数は減りそうですが、ポジティブに解釈をするなら、やるべき準備をきちんとやっていれば投資を受けることはまだまだ可能な状況だとも言えます。
2016年起業組は、焦らず着実な経営基盤作りを
資本政策を始めとして、選択肢を多く持てる状態をキープしておくことは経営において極めて重要です。
例えば今であれば、会社員を続けながらでも事業の仮説検証やプロダクト開発はできます。チームもプロダクトも無い状況下で勢いで会社を辞めたりすると、まずキャッシュフローの面でコントロールが難しくなってきます。
- 良い経営チームを作る(ヒト)
- 良い市場と戦略を見つける(カネ)
- 良いプロダクトを作る(モノ)
この3つにある程度メドが立ってくれば、おのずと勝ち筋が見えてきます。いざアクセルを踏むとなった時にしっかり加速できるように、粘り強く準備に費やす1年間にするのが良いのではないでしょうか。